今夜もあなたと月、見ます。


……



「そろそろ日も陰ってきたし、最後にあれ乗る?遊園地といえば」


…え、ちょっと

え、今のは?

…へ?

「行こう晴」


響紀さんがちょっと悪戯っぽく笑う

その指が差しているのは観覧車

あなた高所恐怖症でしょ

とか言いたいんだけど


それよりも

さっきのは…


…なんですか?

どういう意味ですか?


…特に何も考えず言ったの?

それとも何かあるの?


聞きたいことはいっぱいあるのに

夕陽を背中にこっちを見て笑ってる響紀さんがめっちゃくちゃかっこよくて

もうなんか、いっぱいいっぱいだ…


考えるのは、悩むのは、後の私に任せよう

ただ、今は、もうすぐ終わってしまうこの時間を

大事に


「うん」


響紀さんが差し出す手に自分の手を重ねる

ぐんっと引っ張られて、ベンチから立ち上がる


もう立ち上がったのに

引っ張らなくても良いのに


響紀さんは手を離さなかった

だから私も、離さなかった

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