今夜もあなたと月、見ます。
響紀side
出会いからして不思議だった
明らかに『普通』ではない俺の連れに対して、驚くほど普通に接していた
『年齢を確認したいので、身分証明書のご提示をお願いします』
凛とした、という言葉が思い浮かんだ
第一印象はそんな感じ
わあ。綺麗な子。
しっかりしてるな。
ってな感じだった
でも偶然が重なり、関わってみれば
とびきり変わった子だった
暴走族を厨二病の延長だと言った
それも本人の目の前で
なかなかに勇気のいることだと思う
多分それ俺以外の人間の前だったらかなり危ない発言だよ
とか思いつつ、
それでも
『かっこいいと思いますよ』
って言うんだ
世辞じゃないとすぐにわかった
この人は本音を言ってくれる人だと
暴走族の総長として、暴力的な怖い人間として、俺を見ない
俺をただの他人として見てくれる
彼女が初めてだった
決してこびりもしなければ、身を守るようなこともしない
彼女は怖いくらい真っ直ぐに俺と向き合った
初めてだった
とびきりの普通だった
とびきり、俺が、求めていたもの、そのものをくれた