今夜もあなたと月、見ます。
「もったいないですね」
「え?」
俺の問いや意見に対していつも予想外の返事をくれる晴は、やっぱりまた俺の思いもしない言葉を返してきた
もったいないって…何が?
「響紀さんには好きになる要素が盛りだくさんなのに」
……え
きっと晴は深く考えずにこの言葉を言ったんだと思う
だけど俺には深く考えるななんて無理な話で
この無防備な女の子の横顔をただ呆然と眺めることが精一杯だった
「まあ響紀さんまだまだ若いんですからこれからですよきっと」
…そっか、うんそうだね
ひたすら温かく笑う晴に、遊ばれてるんだろうかとさえ思う
それほどに彼女の表情一つでこんなにも
…心臓いてぇ
簡単に振り回される自分にちょっとびっくりして
あんまりにも夕日に溶けていきそうな彼女にびっくりして
思わず目を逸らす
総長なんて聞いて呆れるよな
こんなにも単純で弱々しい
「晴の番だよ」
わかりやすく話をずらして自分を守りに入ってしまう
きっと今まで出会ってきた相手の中で
晴には唯一、勝てないと思うな