今夜もあなたと月、見ます。
「あ」
するとピクッと耳を上げたヤシャ丸が鋭い目つきに変わる
そしてそのまま塀の上をスタコラと走り去って行ってしまった
「どうしたんだろ」
その後ろ姿を眺めていたら、クイっと服の袖を引っ張られた
「…まみや」
「?」
すごく小さな声で横井くんが私の名前を呼んだ
振り向くと進行方向を鋭い目で見つめて固まる横井くんがいた
さっきまでとは違う類の緊張が伝わってくる
横井くんのこめかみを汗が伝った
「どうした…の」
横井くんの視線の先を見る
…?
誰?
黒い服を着た男の人が一人立っていた
少し茶色い髪と、白い肌の美しい人
細身ですらりと背が高く、骨張っていてなんだか異国の雰囲気がある
にっこりと笑ってはいるが
なんだか喜怒哀楽が分かりづらい
…どこかで見たことのあるような、ないような…
そんな目の色をした男