今夜もあなたと月、見ます。



「俺は別に慎一郎だけに用があるわけじゃない」


…どういうこと?

固まる私の腕を誰かが掴む


「間宮、こっち」

横井くんが私の腕を掴んで引き寄せた

守ってくれるかのように私より一歩前に立つ


「間宮晴ちゃんだよね」


え?なんで知ってるの?

「っ」

横井くんの体が固まったのがわかった


にっこりと男が笑う

人形みたいな笑い方で



「はじめまして、瀧本風磨と申します」


たきもと…ふうま

たきもと…

聞き覚えのある苗字に眉間がピクリと動いた

まあ偶然でしょう…けど



それよりも

「なんで私の名前知ってるんですか」

「君の知り合いの知り合いだからだよ」


知り合いの知り合い…?が私のこと話したってこと?

ちらりと横井くんを見るが、横井くんは俺じゃないぞと首を振る


「…君もよく知ってる人だよ」


その怖いくらい無の笑い方

喜怒哀楽の薄い表情



なぜか私は

響紀さんを連想した



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