今夜もあなたと月、見ます。



「間宮」

「ん?」

「悪い事は言わない」

横井くんが私の目をまっすぐに見る



「道枝から離れるべきだ」



「これ以上深入りすると間宮が危険な目に遭う」



「きっと、道枝もそれは望んでないはずだ」



目の前の横井くんは学級委員でもクラスメイトでもない

風組の人間として言ってる

私の知らない、響紀さんたちの世界を知ってる人間として話してる

急に遠くに行ってしまったみたいで

なんだか辛くなる


この感情は、前も感じた

響紀さんと一緒にいるとよく感じる

あの不安に似てる


「うちの総長は道枝とは違う。情けも糞もない。ひたすらに邪智暴虐で危険な人間だ。自分の欲しいものを手に入れるためなら手段も選ばない」

喜怒哀楽が分かりづらいのは響紀さんに似ている


でも響紀さんはあんなんじゃない


もっと優しくて暖かくて、ロマンチストで、本当は寂しがり屋の弱い人だ

だからわかってる

きっと私が傷付いたら自分のせいだとひどく責めるだろう


だけど…

だからこそ、そばにいてあげなくちゃいけないんだ


誰かが教えてあげなくちゃいけないの

響紀さんの知らない世界のことを


私じゃ力不足だけど

でも…



「私は響紀さんから離れたりしない。あんなに優しくて弱い人、こんな世界は似合わないよ」


響紀さんって本当はね、悪名が似合わないんだよ



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