今夜もあなたと月、見ます。
「間宮」
「ん?」
「悪い事は言わない」
横井くんが私の目をまっすぐに見る
「道枝から離れるべきだ」
…
「これ以上深入りすると間宮が危険な目に遭う」
…
「きっと、道枝もそれは望んでないはずだ」
目の前の横井くんは学級委員でもクラスメイトでもない
風組の人間として言ってる
私の知らない、響紀さんたちの世界を知ってる人間として話してる
急に遠くに行ってしまったみたいで
なんだか辛くなる
この感情は、前も感じた
響紀さんと一緒にいるとよく感じる
あの不安に似てる
「うちの総長は道枝とは違う。情けも糞もない。ひたすらに邪智暴虐で危険な人間だ。自分の欲しいものを手に入れるためなら手段も選ばない」
喜怒哀楽が分かりづらいのは響紀さんに似ている
でも響紀さんはあんなんじゃない
もっと優しくて暖かくて、ロマンチストで、本当は寂しがり屋の弱い人だ
だからわかってる
きっと私が傷付いたら自分のせいだとひどく責めるだろう
だけど…
だからこそ、そばにいてあげなくちゃいけないんだ
誰かが教えてあげなくちゃいけないの
響紀さんの知らない世界のことを
私じゃ力不足だけど
でも…
「私は響紀さんから離れたりしない。あんなに優しくて弱い人、こんな世界は似合わないよ」
響紀さんって本当はね、悪名が似合わないんだよ