今夜もあなたと月、見ます。


「馬鹿みたいだけどな」

…え?

「俺らなんて落ちこぼれの集まりだよ」

落ちこぼれ?


「暴力でしか解決方法を知らない、強さこそが上に立つ資格だと思ってる古臭い考え方をした奴らの集まり、所詮空振りのでくのぼうだよ」

力が抜けたように笑った

「暴走族がかっこいいなんて、作り話でしかあり得ないんだよ」

バイクのヘルメットを私に渡して前髪をうっとおしそうにかき上げる

「たとえ運良く更生できたとしても、元暴走族っていう最悪のレッテルは永遠につきまとう。
若気の至りとか恥ずかしい歴史に変わるだけなんだ」

「…」

「それでも抜け出せないのは、何かを失うのが怖いから。俺たちはそういう弱さを力で隠してる弱虫の集まりなんだよ」


夜に溶けそうな微笑みを向けられて何故か心臓が鳴く


締め付けられるみたいに苦しくて、少し甘い

この感情がなんなのかは知るよしもない


「そういう俺らみたいな間違った生き方をした奴らを世間は落ちこぼれって言うんだ」


間違った…生き方


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