今夜もあなたと月、見ます。
「はいよ、到着」
駅前でおろしてもらう
「そうそう勝手に彼女呼ばわりしちゃってたけどごめん。あの場ではあれが一番マシかと思って」
あー
「いえ、大丈夫です。おかげで助かりました。ありがとうございます」
「まあしばらくしたら別れたってことにしておくよ」
「お願いします」
彼はニッと優しく笑った
ヘルメットを返して、向き直る
「……あの」
私はやっぱり
「落ちこぼれなんかじゃ…ないと思います」
バイクに乗っている間、ずっと考えていたことを口にした
「…え?あ、さっきの話?」
こくんと頷く
「間違った生き方とか、そんなんじゃないと思います」
正しい生き方なんてものはない
「そりゃ…暴走族なんて厨二病の延長だって考えてたような私ですけど」
「ブフォッ」
?
私の言葉に吹き出す彼
少なくともそうでは無いことはわかった
それに
「生き方って、やっぱり自由じゃないですか」
常識だとかは置いておいての話ね
タイミングよく夜風が吹き、私たちの髪を揺らす
何を考えているのか分かりづらいグレーの瞳が、私を真っ直ぐに捉える