今夜もあなたと月、見ます。
1 寝待月
「ただいま」
「…」
リビングの電気がついている
おじさんはいるんだ
そっとリビングに顔を出す
「遅かったな」
「バイトが長引いて」
「そうか」
会話終了
私が住んでるのはこのおじさんの家
お母さんの弟
お母さんもお父さんももういないから、唯一の親戚の家に住んでいる
お母さんは私を産んですぐに亡くなった。お父さんは私が小学生の時、病気で亡くなった
それからはこのおじさんの家で過ごしている
でも、おじさんとはただ同じ家に住んでる他人みたいな関係
営業の仕事をしているとても優秀なおじさん
まだ若いし、見てくれもとてもいい
私がいなければ、きっとおじさんの人生は薔薇色だった
そう、私がいなければ
私が生まれたせいでお母さんが死んだ
私が取り残されたせいで、私の分の生活費まで稼がなければならない
時には保護者になる
そんなおじさんとの会話はほぼない
きっとおじさんは
私のことが嫌いだ