今夜もあなたと月、見ます。




男の子だけど、横井くんは詳しかったりするかな



「…ねぇ横井くん」

「ん?」

「道組って知ってる?」

「知ってるよ。ここらで有名な暴走族でしょ」


結構有名なんだ

私昨日まで知らなかったのに


「珍しいね。間宮からその話題が出るなんて思ってもなかったよ」

「そ、そうかな」

「興味あるの?」


いや…興味あるって言うか

昨日の出来事がなければ一生興味も持たなかったと思う


「…いや、今日男子達が話してたからちょっと気になっただけ」


なんて嘘をついて

ひたすら手を進める


「まあ確かにイレギュラーだからね。俺も全く興味がないって言ったら嘘になるけど。でも傍観者で十分かな」

傍観者

「暴走族なんて聞こえも悪いし、いいイメージなんて微塵もないだろ?そんな人もいるんだなー程度に知っておくくらいで十分だと思ってる」


…そうだよね


「関わったってろくな事ないよ」


…うん

そうだよね

それが普通だよね


私だって昨日まではそう思っていた


なのに

今は、もう一度だけでもいいから

あの人に会いたいと思ってしまう



どこに行けば会えるだろうとか
暴走族について知識をつければ出会えるかなとか

そんな戯けたことを考えてしまう


運命でも宿命でもなんでもないただの偶然なのに


< 39 / 177 >

この作品をシェア

pagetop