今夜もあなたと月、見ます。
…
男の子だけど、横井くんは詳しかったりするかな
「…ねぇ横井くん」
「ん?」
「道組って知ってる?」
「知ってるよ。ここらで有名な暴走族でしょ」
結構有名なんだ
私昨日まで知らなかったのに
「珍しいね。間宮からその話題が出るなんて思ってもなかったよ」
「そ、そうかな」
「興味あるの?」
いや…興味あるって言うか
昨日の出来事がなければ一生興味も持たなかったと思う
「…いや、今日男子達が話してたからちょっと気になっただけ」
なんて嘘をついて
ひたすら手を進める
「まあ確かにイレギュラーだからね。俺も全く興味がないって言ったら嘘になるけど。でも傍観者で十分かな」
傍観者
「暴走族なんて聞こえも悪いし、いいイメージなんて微塵もないだろ?そんな人もいるんだなー程度に知っておくくらいで十分だと思ってる」
…そうだよね
「関わったってろくな事ないよ」
…うん
そうだよね
それが普通だよね
私だって昨日まではそう思っていた
なのに
今は、もう一度だけでもいいから
あの人に会いたいと思ってしまう
どこに行けば会えるだろうとか
暴走族について知識をつければ出会えるかなとか
そんな戯けたことを考えてしまう
運命でも宿命でもなんでもないただの偶然なのに