今夜もあなたと月、見ます。


これは御伽噺じゃない


そんなことはわかってるつもりだ


だけど、もしかして

もう一度

甘めカフェオレを買っていってくれるのではないかと


入店の報知ベルがなるたびに反応してしまう


あー女々しいこと



「昨日なんかあったの?」

「へ?」


瀧本さんがつぶやいた


「なんかってなんですか」

「いやぁバイクの音にはよく反応するし、そわそわしてるし、昨日とはまるで違うから何かあったのかと」




やだ私わかりやすい


「…なんにもないですよ」

「道組…」




ボソリと言った瀧本さんのその言葉にピクリと肩を揺らす


「…道組の誰かに接触したりした?」


え?

急に真面目な顔になった瀧本さん


「な、なんでそんなこと聞くんですか」

「バイトの可愛い後輩が危ない輩に接触してたら俺だって心配するだろ」


思ってないくせに

どうせ自分が興味あるからでしょう?


「なんにもないですってば」

「…ほーん?ま、もし何かあったら俺に教えてね」


えーやだよ


「道枝響紀のこととか」


ぎく

その名前に反応しそうになったけどなんとか堪えた


ていうか、瀧本さん

下の名前まで知ってるとか…大ファンかいな

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