今夜もあなたと月、見ます。


「それまた猫?」

「え?」


この前は眉毛のところだったけど、今回はこめかみに切り傷みたいなのがある

「こめかみのところの…」

「あー猫だね。最近乱暴で困っちゃうよ」

へぇ


「猫、可愛い?」

「可愛いよ」

「なんて名前?」

「ヤシャ丸」

や、やしゃまる!

可愛い!

「凶暴だけどねー」

いいなぁ

「間宮って猫好きなの?」

「うん。すき」

「…へぇ」




即答した私を見て、ふっと表情を和らげた横井くんがふふっと息を漏らす

「何笑ってるの?」

「いや、間宮のこと一つ知れたと思って」


…え?


「何にも知らなかったからさ俺。間宮のこと」



「一つじゃないか。コンビニでバイトしてるってことと、猫が好きってこと」





『じゃあ決まり。会うたびにお互いに一つ質問する。会えば会うほどお互いのことを知っていく』

響紀さんの声が脳内でリピートされた



「…そう、だね」

「どうしたの?」

へ?

「いや、急に上の空になったから」

「ああ…なんでもないよ」


はぁ…

女々しくて辛いとはこのことかしら


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