今夜もあなたと月、見ます。
「え、ど、どこから?どうやって?…ひ、紐なしバンジーでもしてました?」
「あはは」
いや、何爽やかにワロてんねんっ
こっちは情報量に脳の処理が追いついてないの!
「ちょっと面倒ごとに巻き込まれてさ、逃走中なの」
それで上から?
やっとのことで少しずつ状況を理解し始める
えっと
私が歩いていた道の隣は私の身長プラス30センチほどの石の塀になっている
おそらく向こう側からこの塀を飛び越えたんだろう
落ちていた黒い上着を拾う響紀さん
「まさか着地地点に晴がいるとはすごい偶然だねー」
え、あ
「そう、ですね…」
じゃなくて!
「逃げなくていいんですか!?」
えー?とこっちを見る呑気な響紀さんは
ジーンズに白いTシャツというシンプルな格好だが
所々に土やら汚れやらがついていて、どんな道を逃げてきたんだろうと思う
「大丈夫大丈夫。そんなガチにならなくても逃げれる相手だし、ぶっちゃけ相手にすんのがだるくて逃げてただけだから」
からりと笑う
だ、だるいって…
この人何かとめんどくさがりだな