今夜もあなたと月、見ます。



「横井…くん?」


フードの下の顔は確実に見たことのある顔

私の知ってる人の顔

紛れもない、同じクラス、同じ学級委員の


横井慎一郎くんだ



「…な、なんで間宮が…?」

いや…なんでってこっちのセリフだよ

なんで、響紀さんを追いかけてんの?

「晴、知り合い?」

ちらっとこっちを見た響紀さんが言う

「えっと…は、はい…まあ」

「へぇ…晴は何かと族に縁があるね。こいつ風組の下っぱだよ」


か、風組…?

風組って…道組と対立してるもう一つの暴走族?

そ、そんなことある?

だって横井くんはしっかりしてて、みんなから人気者で…真面目な学級委員長だよ?

傍観者でいいって言ってたじゃん


唖然とする私と横井くん

「…な、なんで…間宮が道枝と話してんの?」

え、えと…

「まあちょっと訳あって、今俺の彼女」


はっ!?

…あ、いや、そうか

そういう設定だった

忘れていた苦し紛れの設定を思い出す


「か、かの…かのじょ?」

「ま、そういうわけだから諦めろ風組の下っぱ」


ぐい

わっ

呆然としていた私の手を引っ張る響紀さん


「俺らもう行くから」

「あ。待っ」

「わかってるだろうけど、彼女もいるんだし、これ以上邪魔するんだったらそろそろ潰すよ」

「っ」

横井くんの額を冷や汗が伝う


「じゃ風組のお頭によろしく」

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