今夜もあなたと月、見ます。
結局なかなか顔の熱はおさまらず、そのままやたら上機嫌な響紀さんに連れられてエレベーターに乗る
この前来た時よりも上の階を押す
「どこ行くんですか」
「んー?もうすぐだから」
?
五階建てのこの建物
着いたのは最上階の五階
「ここは俺が普段寝泊まりしてる場所。他の奴らは入れないよ」
…じゃあ人払いにあんなこと言う必要なかったじゃん
不服そうな私を見てまたくすりと笑う
「おいで」
エレベーターの扉が開いて、響紀さんが手招きする
そこは焦茶色の無垢フローリングの床に黒色の壁紙というどこかアンティークな雰囲気の部屋だった
無駄なものがなく、大きめのベットと机と椅子、小さなタンスやらがあるだけでがらんとしている
響紀さんが生活している場所
「こっち」
だけどその部屋には入らず、入り口の隣にあるコンクリートの階段の方へ導かれる
とにかくその背中について行く
階段の上で重い扉を開くと、ふわっと風が吹き上げ、響紀さんと私の黒い髪を揺らす
外の光がちょっと眩しくて目を細める
「屋上?」
「うん」