今夜もあなたと月、見ます。
案内されたのは屋上だった
灰色の床と、白い柵
ベンチが一つあるだけで、あとは何もない広い場所
この建物自体のある場所が人通りの少ないところなのもあり、近くにビルも少ないから視界が広い
いつのまにか日はだいぶ傾き、夕日が沈みかけているのが綺麗に見える
「高いところ平気?」
「はい」
五階だしそんな高くない
「俺はちょっと苦手」
え
苦手なの?
「ここはまだ柵があるし、下見ないで済むからいいけど」
少しだけ肩を窄めた響紀さん
い、意外…
なんかちょっと予想外だった
へぇ…高いところ怖いんだ
「何笑ってんだよ」
思わず息が漏れた私に響紀さんが不服そうに言う
「いやふふ、だってなんか」
まさかの総長さんが高所恐怖症だとは
人間見た目だけじゃ何も分からない
「ダサい?」
「ダサくはないですよ」
緩んだままの顔を向けて言った