今夜もあなたと月、見ます。
「晴はかっこいいな」
……え?
全く予想していなかった言葉が返ってきて、思わず気が抜ける
か、かっこいい?
何が?
今の話のどこにそんなことを感じる場所があった?
「強く生きてきたんだな」
…
「自分の力で、迷わず真っ直ぐ、ここまで生きてきたんだろ」
…真っ直ぐ…?
響紀さんが黒い髪を風に揺らしながら、私を見た
「お前は大人の敷いたレールの上を歩いてきただけだって前に言ってたけど、それって簡単なことじゃないんだぜ」
初めて会った日に、私が言った言葉
覚えてたんだ
「自由に生きる人間が正しいわけでもないし、何もかも完璧にこなす人間が正しいわけでもない。だから生き方の正解不正解はどうでもいいんだけど
ただ、晴が今ここにいるのは、お前がどんな状況にぶち当たっても強く生きてきたからだろ」
…そんな、盛大な人生を歩んできたわけではないですよ
「だから、スッゲェかっこいいと思うよ」
っ…
響紀さんの大きな手が私の頭に乗った
そしてゆっくり動く
「よく、頑張ったな」