今夜もあなたと月、見ます。
…暴走族の総長
なんだかおとぎ話みたいだ
そんな人って本当にいるんだな
今までの生活にそんな人との出会いなんて一切なかったから
そういうものの存在は誰かの作り話だと思っていた
まあ今回もたまたま接触しただけであって
ここから物語が展開されて行くなんて
誰かの妄想でしか有り得ないけどね
「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様ー気をつけてねー」
高校生は21時までしか働けないので、ギリギリまで働いた私は瀧本さんに見送られて夜の街に出る
夏の初めだというのに今日はなんだか肌寒い
少しジメジメしていて
背筋に虫が這うような嫌な空気
なんとなくブルっと身震いをして、早歩きで家に向かった
嫌な予感ほど当たると言うものだ
人の少ない道を歩いていた時、嫌な音が聞こえた
約1時間前にも聞いたバイクの暴れる音
その音が後ろからだんだん近づいてくる
…スピードが落ちている
音が静かになっていく
気配を感じ取れるほど近くに来た時
「あは、やっぱりー!さっきの店員さんじゃーん」
!
聞き覚えのある嫌な声に肩を揺らした