今夜もあなたと月、見ます。
ドクン
ドクン
心臓が、大きく波打つ
身体が、熱を帯びる
何かが、込み上げてくる
たった一言
響紀さんのたった一言が
『よく、頑張ったな』
響いて、響いて
私の血を掻き回すみたいに
ジンジンする
指先が、胸が、キュッとなってジンジンする
いつか、誰かに、言って欲しかった言葉
私が、きっと、聞きたかった言葉
「…晴?」
ああ、ちょっとキャパオーバーだ
ぽろりと、最後に流したのがいつかわからない
しょっぱい雫が目から落ちる
「う、ぅぅ…」
「…晴、おいで」
私の頭に乗っていた手が肩に移り、そのままゆっくり引き寄せられる
そのまま響紀さんの肩に、私のおでこをくっつける
ちょうど私の顔が響紀さんの胸くらいになる身長差だから、顔を隠すにはちょうどいい
響紀さんのほんのり香るミントの匂い
優しい熱
抱きしめられているわけではない
その一歩手前くらいの、微妙な距離で
額から伝わる響紀さんの熱や、かくばった骨が私の心臓をまた締め付ける
「…お疲れさん。晴はすげぇやつだよ。辛かったな」
「う…ぅあ、ああ…」
お母さん、お父さん
会いたいよ…
愛してよ
抱きしめてよ