今夜もあなたと月、見ます。
「今はこうやって道組とか言われてる組の代表やってるけど、俺が自ら立ち上げたわけでもないし、人を集めたわけでもない。場所と利益と強さ、そして導く人がいりゃついてくる人間は結構いるってだけだよ」
…そんなことを言っている響紀さんの目は
やっぱり喜怒哀楽が薄くて、わかりづらい
でも、喜と楽ではないことは確かだ
「最後に家に帰ったのいつだっけ…」
ボソリとつぶやいた
まるで溢れてしまったかのような音で
「まあなんでもいいけど、そんな感じかな。俺のジンセー」
にっこりと笑う
「あーこんな丁寧に自分の過去振り返ったの初めてだよ。なかなかに自分史を辿るのは面倒くさいね」
ええ、確かに
「あんまり面白くなかっただろ?すっごいでっかい喧嘩に一人で立ち向かって勝利したとか、めちゃめちゃ強い暴走族をデコピンで黙らせたとか、そんな武勇伝はないよ」
何言ってるんですか
「そんなのは期待してなかったですよ」
「はは、そっか」