聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「玲奈」

 祥子とのお喋りに夢中になっていた玲奈の背中の十弥が声をかける。玲奈は振り返りながら言う。

「あ、任せちゃってごめんね。なにか荷物だった――」

 十弥の隣に立つ人物に玲奈の目は釘付けになった。唇が震えて、うまく声が出ない。

「……さん。お母さん!」

 玲奈は立ちあがると佐和のもとへ走った。記憶にあるよりずっと細くなったその身体に思いきり抱きつく。

「遅いよ。あかり、もう一歳になっちゃったんだから!」
「ごめん、ごめんね……」

 佐和の声も震えていた。そこに祥子が明るく声をかける。

「うふふ、遅くなんてないわよ。まだ一歳。七五三もお誕生日も入学式も。楽しいイベントはた~くさんあるもの」

 祥子と佐和の帰ったリビングで、玲奈はずっと自分のスマホを見つめていた。遊び疲れたのかあかりはぐっすりと眠っている。

「まだ見てるのか」

 柔らかな声音で言って、十弥は玲奈の手元のスマホをのぞきこむ。画面は、先ほどみんなで撮った写真だ。十弥と玲奈のあかり、祥子と佐和。みんな笑顔でそこにおさまっている。
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