聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「いい写真だな」
「でも、きっとお義父さんが寂しがるから……また撮ろうね」
「このへんに丸く合成しておけばいいんじゃないか」

 十弥がそんな冗談を言って、玲奈は声をあげて笑う。

「私ね、ずっとこういう幸せそうな家族写真をうらやましく思っていたの。夢を叶えてくれて、本当にありがとう」

 大輪の花のような笑顔を向ける玲奈の唇を十弥はそっと奪う。

「いや、夢を叶えてもらったのは俺のほうだ」
「十弥の夢?」 

 それはなんだろうと思い、玲奈は彼の瞳をのぞきこむ。

「笑うなよ。俺は……恋愛ってものに憧れてたんだ。本気で、全力で、愛せる女をずっと探していて」

 彼はそこで言葉を切ると、慈しむような眼差しを玲奈に注ぐ。

「やっと見つけた。玲奈に会えて、俺の夢は叶った」

 甘すぎるほどの台詞に玲奈はたじろぐ。照れ隠しからついつい、かわいげのないことを言ってしまう。

「なんでも完璧な超人なのに、女性の趣味だけは微妙だね」

 すると、十弥はくいと玲奈の顎を持ちあげ正面から彼女をまじまじと見つめた。至極真面目な顔で言ってのける。

「いいや、我ながら最高の趣味だな」

               END

                                          END
                      
< 105 / 111 >

この作品をシェア

pagetop