聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
そして迎えた副社長就任挨拶の日。
黒のスーツに華やかな赤いタイ。よく通る落ち着いた声で語る壇上の十弥は輝くばかりに美しく、玲奈は誇らしいような気持ちでその姿を見守っていた。スピーチを終えて頭をさげた彼に割れんばかりの拍手と喝采が送られる。スピーチは大成功だった。
その場にいた女性は、もれなく全員が彼に心を奪われていた。
「はぁ、本当に素敵だった! 顔だけじゃなくて声もいい」
「スピーチも上手よね。知的でユーモアがあって」
今日ばかりは玲奈も例外ではなく、彼女たちの言葉に思わずうなずいてしまった。
「はぁ、疲れた」
役員専用の黒塗りのリムジンに乗りこむと、彼はネクタイをゆるめてほっと息を吐く。後部座席に背中をあずけ、コキコキと首を鳴らした。
隣に座った玲奈は彼にあたたかいコーヒーを差し出し、ねぎらいの言葉をかけた。
「本当におつかれさまでした。素晴らしいスピーチでした」
ふっと目を細めた彼に、玲奈は少し拗ねたような表情を向ける。
「それにしても、私に原稿を考えさせる必要なんてなかったじゃないですか」
さきほどの彼のスピーチはたしかに玲奈の原稿がベースになってはいたが、全体の七割近くが彼自身の言葉へと置き換えられており、悔しいが玲奈の原稿の何倍もいい仕上がりになっていた。玲奈に丸投げするくらいだから原稿作成は苦手なのかと思っていたが、そうではなかったようだ。
(ほんと、憎らしいほどに欠点がないんだから)
黒のスーツに華やかな赤いタイ。よく通る落ち着いた声で語る壇上の十弥は輝くばかりに美しく、玲奈は誇らしいような気持ちでその姿を見守っていた。スピーチを終えて頭をさげた彼に割れんばかりの拍手と喝采が送られる。スピーチは大成功だった。
その場にいた女性は、もれなく全員が彼に心を奪われていた。
「はぁ、本当に素敵だった! 顔だけじゃなくて声もいい」
「スピーチも上手よね。知的でユーモアがあって」
今日ばかりは玲奈も例外ではなく、彼女たちの言葉に思わずうなずいてしまった。
「はぁ、疲れた」
役員専用の黒塗りのリムジンに乗りこむと、彼はネクタイをゆるめてほっと息を吐く。後部座席に背中をあずけ、コキコキと首を鳴らした。
隣に座った玲奈は彼にあたたかいコーヒーを差し出し、ねぎらいの言葉をかけた。
「本当におつかれさまでした。素晴らしいスピーチでした」
ふっと目を細めた彼に、玲奈は少し拗ねたような表情を向ける。
「それにしても、私に原稿を考えさせる必要なんてなかったじゃないですか」
さきほどの彼のスピーチはたしかに玲奈の原稿がベースになってはいたが、全体の七割近くが彼自身の言葉へと置き換えられており、悔しいが玲奈の原稿の何倍もいい仕上がりになっていた。玲奈に丸投げするくらいだから原稿作成は苦手なのかと思っていたが、そうではなかったようだ。
(ほんと、憎らしいほどに欠点がないんだから)