聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「俺はただインパクトのある言葉で君の原稿を装飾しただけだ。間違いなく、今日の成功は君の功績だよ」

 自慢するつもりはないが、玲奈は自身がそこそこ優秀な秘書だと自負している。担当していた役員からの感謝の言葉はこれまでもたくさんもらってきた。だが、こんなにも心が浮き立つのは初めてのことだった。

(――別に好きとかじゃない、絶対に惚れたりしない。だけど……この男(ひ)性(と)に認めてもらえるのは、特別な気がする)

 涼しげな彼の横顔を眺めながら、玲奈はゆるみそうになる頬を必死で引きしめた。秘書の仕事に楽しさを感じたのは久しぶりで、玲奈は自分が決してこの仕事を嫌いではないことをあらためて実感する。

「ご褒美をやろうか」

 蠱惑的な笑みを浮かべて十弥は言った。

「なにが欲しい?」

 彼の声には耳を直接刺激してくるような独特の艶がある。
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