聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「ご褒美……それなら」

 玲奈はためらいがちに言葉をつむいだ。

「仕事の依頼はすべて明日までにいただけますか? 明日は休日出勤でもなんでもしますから」

 明日は土曜日、その翌日は航平との約束があった。十弥の秘書になってからというものあまりにも忙しく、彼に会うのは久しぶりだった。

「つまり日曜は休日出勤には応じないということか」

 軽く目を伏せられた彼の長い睫毛を見つめて、玲奈は言う。

「日曜はデートなんです」

 口から出た言葉は玲奈自身にも想定外のものだった。わざわざ異性の存在を匂わせるような話をしたのは……線を引きたかったから。秘書としての仕事をまっとうするためには、彼と一定の距離を保つ必要がある。特別な目で見てはいけない。けれど、それがどうにも難しいことを玲奈は無意識のうちに感じ取っていた。

 十弥は本人の意思とは無関係に、周囲の人間を魅了し虜にする。油断していると玲奈も絡め取られてしまいそうなのだ。
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