聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「買ってくる」

 十弥の目元が柔らかな弧を描く。心底うれしそうな顔で彼は言った。

「君が……そんなふうに笑って子どものことを考えてくれていることがうれしい。その顔が見られるなら売り場ごと買い占めたって惜しくはない」

 彼に言われて、玲奈もはっとする。玲奈は今、ごく自然に出産後のことを想像していた。玲奈と十弥と、生まれてくる子どもとの暮らしを頭に描いていた。
 自分がこんなふうに変われるなんて、想像もしていなかったことだ。

「全部、副社長のおかげです。あなたじゃなかったら、こんなふうには思えなかった」

 十弥はくしゃりとした笑顔で玲奈の頭を撫でた。

「これ以上ないうれしい言葉だが……いいかげんに副社長はやめないか? 十弥と呼べ。敬語もなしだ」
「うっ。善処します」

 買い物のあとは久しぶりに外で食事をして、十弥のマンションへ帰った。
 パーティーでも開けそうな広々としたリビングからは都内の夜景が一望できる。こんなゴージャスな部屋に自分が住むことになるなんて、玲奈はいまだに信じられないような気持ちだった。
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