聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「うん。やっぱり君によく似合う」 

 十弥は甘い瞳で玲奈を見つめて、言葉を続けた。

「はっきりと言葉にしたことはなかったから……あらためて言う。俺は君が好きだ。妻になってほしい」

 玲奈の瞳に涙があふれた。幸せが胸いっぱいに広がり、しばらく言葉が出なかった。
 十弥はほほえみ、きっぱりとした口調で告げた。

「君とお腹の子を絶対に幸せにすると誓うよ」
「うれしい。十弥、その……」

 今なら正直に言える、玲奈は勇気を出して顔をあげた。

「あんなに無理だと思っていた赤ちゃんとの暮らしが、今は楽しみに思える。それは、きっと」

 十弥はじっと玲奈の言葉を待った。彼の優しい眼差しに背中を押されるように、玲奈は言葉をつむぐ。

「十弥を好きになったから。十弥と赤ちゃんと三人で暮らせることがうれしい」

 十弥は大きく目を見開いたかと思うと、くしゃりとした笑顔を見せた。

 この笑顔を宝箱にしまっておけたらいい、そうしたら何度でも見返して幸せな気持ちになれるのに。玲奈はそんなふうに思った。

 幸せすぎて胸が痛くなることもあるのだと、玲奈はこの日初めて知った。
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