聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 瞼が重い、身体もまるで鉛になったみたいだ。このまま永遠に眠っていられたらいいのに。
ほんの一瞬そんなことを考えてしまった玲奈を責めるように、お腹がちくりと痛んだ。

「うっ」
「目が覚めたか?」

 うっすらと開いた玲奈の目に飛びこんできたのは、心配そうな十弥の顔。

「ごめんなさい、私……」

 状況を思い出しながらゆっくりと身体を起こした玲奈の背中を、十弥が慌てて支えた。彼はベッドに腰をおろしながら言った。

「雨に濡れて微熱が出てる。親切な人が助けてくれたからよかったものの」

 十弥の表情には呆れと怒りが透けて見えた。低く落ち着いた声でさとすように彼は言う。

「頼むから、身体は大事にしてくれ。具合が悪くなったなら俺を呼ぶとかできただろう」

 彼の怒りはもっともだ。玲奈の軽率な行動で、あの人のよさそうな老婦人に迷惑をかけお腹の子を危険にさらした。

「かかりつけの産婦人科に電話したら、微熱程度なら心配ないとは思うが念のため明日病院に来てくれとのことだった」
「はい」
「俺も明日は仕事を休んで付き添うから」

 その十弥の言葉にかぶせるように玲奈は言った。

「大丈夫、ひとりで行けるから。十弥はプロジェクトの打ち合わせがあるでしょう。そっちを優先して」
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