聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 寝不足でぼんやりした頭でリビングルームに入ると、十弥はすでに出かけたあとだった。
ダイニングテーブルにメモが残されている。

【診察結果は必ずメールを入れるように。今日はできるだけ早く帰る。お腹の子どもだけじゃない、君が心配だ】

 玲奈は指先で彼からの手紙をそっと撫でる。流麗な文字から彼のあたたかな愛情が伝わってくる気がした。玲奈はそのメモをポケットに入れ、産婦人科へと向かう。

 月曜の朝だというのに混雑している産婦人科の待合室を、玲奈は落ち着かない気持ちでキョロキョロと見渡す。

(あれ、なんだろう。私、どうしてこんな場所にいるんだろう)

 すっかり慣れたと思っていたこの場所が、今日は敵地のように思える。周囲の幸せいっぱいの妊婦のなかで玲奈だけが異分子になったみたいだ。
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