聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「赤ちゃんは心配ないです。でも、身体を冷やすのは本当に危険なので気をつけてくださいね」
「はい」

 医師の言葉に玲奈は素直にうなずく。エコー写真を受け取り、診察室を出た。写真のなかの子どもはいつの間にか人間らしい形に成長していた。初めてもらった写真ではまったくピンとこなかったが、今は説明がなくともどこが頭でどこが足か、はっきりと理解できる。

「ずいぶん大きくなったんだね」

 玲奈はお腹をさすりながらそう声をかけた。

(ごめんね。こんなダメな母親で……)

 まっすぐ家に戻る気になれず、玲奈は病院近くの大きな公園に立ち寄る。ベンチに座りぼんやりしていると、まるで世界から取り残されたように気持ちが沈んだ。小さな子どもたちのはしゃぐ賑やかな声がどんどん遠くなっていく。

【親権 父親】

 無意識のうちに、手元のスマホでそんなワードを検索してしまっている自分に気がつき、玲奈はふっと苦い笑みをこぼす。

(十弥なら、きっとこの子を大切に育ててくれる。もしかしたら、私はいないほうが……)

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