聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「そうそう。その十弥さんが急遽副社長に就任して日本に戻ってくることになったんだよ」
これには玲奈も少し驚く。もちろん、十弥が次期社長であることは社内外で周知の事実ではあるが、副社長のポストはいくらなんでももう少し先だろうと言われていたからだ。
「ずいぶん急な話ですね。役員人事は先月に決定したばかりなのに」
「それがさ、上のほう最近ちょっとゴタゴタしてたでしょ。二転三転で、話が変わったみたいで」
大企業にはよくある内部の派閥争いだ。
「でも、十弥さんが日本に戻られることと私の異動になんの関係が?」
玲奈は眉をひそめた。秘書とはいっても末端のいち社員である玲奈と上層部の揉めごとはなんの関係もないはずだ。ここで丹羽はようやく本題に入った。顔の前で両手を合わせて、玲奈に懇願する。
「芦原さん、頼む! 新副社長の秘書をつとめてくれ」
玲奈は取り繕うことすら忘れて、思いきり顔をしかめた。本社に戻ってきたばかりの副社長の秘書なんて引き受けたら、また数年は秘書室を離れられなくなる。
「どうして私なんですか。秘書はほかにもいますよね?」
玲奈は語気を強めた。ここで丹羽に同情するそぶりを見せたら終わりだ。断固拒否の姿勢を貫くのだ。
「十弥さんがとんでもなく気難しい人なのは君も聞いているだろう? 超優秀な自分と同じ水準を他者にも当然のように求める人なんだよ。彼の秘書が務まるのなんて、芦原さんしかいないよ」
鬼の和泉十弥の逸話は社内にいくらでも転がっている。その噂が真実ならば、玲奈だってうまくやれる自信はない。
これには玲奈も少し驚く。もちろん、十弥が次期社長であることは社内外で周知の事実ではあるが、副社長のポストはいくらなんでももう少し先だろうと言われていたからだ。
「ずいぶん急な話ですね。役員人事は先月に決定したばかりなのに」
「それがさ、上のほう最近ちょっとゴタゴタしてたでしょ。二転三転で、話が変わったみたいで」
大企業にはよくある内部の派閥争いだ。
「でも、十弥さんが日本に戻られることと私の異動になんの関係が?」
玲奈は眉をひそめた。秘書とはいっても末端のいち社員である玲奈と上層部の揉めごとはなんの関係もないはずだ。ここで丹羽はようやく本題に入った。顔の前で両手を合わせて、玲奈に懇願する。
「芦原さん、頼む! 新副社長の秘書をつとめてくれ」
玲奈は取り繕うことすら忘れて、思いきり顔をしかめた。本社に戻ってきたばかりの副社長の秘書なんて引き受けたら、また数年は秘書室を離れられなくなる。
「どうして私なんですか。秘書はほかにもいますよね?」
玲奈は語気を強めた。ここで丹羽に同情するそぶりを見せたら終わりだ。断固拒否の姿勢を貫くのだ。
「十弥さんがとんでもなく気難しい人なのは君も聞いているだろう? 超優秀な自分と同じ水準を他者にも当然のように求める人なんだよ。彼の秘書が務まるのなんて、芦原さんしかいないよ」
鬼の和泉十弥の逸話は社内にいくらでも転がっている。その噂が真実ならば、玲奈だってうまくやれる自信はない。