聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「やっぱり。玲奈ちゃんだよね?」
「こ、航平さん!」

 ほんの数か月前まで運命の相手だと信じていた男、航平だった。互いにはっきりと言葉にせず、うやむやに関係を終わらせたので、やや気まずい空気が流れていた。

「平日なのにどうしたの?」
「えっと、病院に行くために有給を取ったんです。航平さんはどうしてここに?」
「俺はクライアントからの帰り道で」

 航平はそこで言葉を止めて、玲奈の目を見た。

「よかったら、少し話せるかな?」

 断る理由もないので玲奈がうなずくと、航平はほっとしたような顔で隣に腰をおろした。

「病院ってどこか悪いの?」
「いえ、定期健診みたいなものなので全然心配ないんです」

 彼に妊娠を報告するのはさすがにおかしいだろうと思い、玲奈は曖昧に話をごまかした。お腹もまだ全然膨らんではいないし、気づかれることはないだろう。

「そっか、ならよかった」

 航平はそのあと少し自分の仕事の話をした。この近くに本社があるIT企業のコマーシャルが取れそうなのだとうれしそうに語った。だが、わざわざ隣に座った目的は仕事の話をするためではなかったようだ。会話が途切れると、彼は意を決したように顔をあげる。
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