聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「あのさ、なんかごめんね。急に連絡しなくなって……」
「いえ、それはこちらも同じですから」

 むしろ、航平が察してくれる人でよかったと玲奈は感じていた。付き合ってもいない相手と別れ話をすることほどむなしいものはない。
 航平は寂しげに薄く笑う。

「玲奈ちゃんも子どもを望まない人だったんだね」

 お腹の子どもが聞いているような気がして、玲奈は答えに窮した。その質問には答えず、玲奈は航平にこう返した。

「私……も?」

 今、航平の心にいるのは自分じゃない、それは直感的に理解できた。

「ははっ。長く付き合ってた前の彼女もね、子どもは欲しくないんだって。それが原因で別れることになったんだけど」
「そうだったんですね。――後悔してるんですか?」

 聞かなくても答えはわかる気がした。わざわざ、深い付き合いでもない玲奈を相手に話すくらいなのだ。きっと彼のなかに迷いがあるのだろう。
 航平は空を仰いで、ふぅと小さく息を吐いた。

「それが、わかんないんだよなぁ。俺は子どものいる家庭が理想で、それはきっと変えられないし」
「難しいですよね、結婚って」

 好きじゃなきゃ一生を捧げるなんて無理だ、でも好きだけじゃどうにもならないこともある。航平がちらりと横目で玲奈を見た。

「ものすごく無神経なこと聞いていい?」
「いいですよ」
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