聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「玲奈! お前、なにを……」

 怒りをあらわにした十弥がツカツカと航平のもとへ歩み寄る。完全に誤解しているようだ。焦った玲奈は慌ててふたりの間に割りこんだ。

「待って、違う。航平さんは関係ないから」
「なら、なんで君は泣いているんだ?」

 いまだかつて見たことないほど十弥は激高していた。航平は十弥と玲奈の顔を交互に見つめ、つぶやく。

「えっと、この人はいったい……」

 十弥は航平に見せつけるように玲奈の腰を引き寄せると、きっぱりと告げる。

「彼女の婚約者だ」

 玲奈は思わず頭を抱えた。なんの罪もない航平を余計なトラブルに巻きこんでしまった。玲奈は何度も彼に頭をさげて、その場から航平を帰した。彼の背中が見えなくなっても、隣の十弥からは恐ろしいほどの殺気が伝わってくる。
 低い声で彼は言う。

「どういうことなのか、すべて説明してくれるな」

 玲奈は肩をすくめてうなずいた。

 公園からマンションに戻り、ふたりはリビングのソファに並んで座った。玲奈は航平のことをすべて正直に話した。十弥にも話したことのある過去の淡い恋の相手で、今日会ったのは偶然だったこと。だが、十弥の顔は険しいままだ。

「その、疑われても仕方のない状況だとわかってるけど」

 玲奈のその言葉を彼はあっさりと否定した。
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