聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「疑ってはいない。君が浮気をするような女だとは思っていないし、そもそもあの公園は多くのビジネスマンが時間つぶしに来る場所だ。知り合いに会ってもおかしくない」
「それならっ」

 なにをそんなに怒っているのだろうか、玲奈はのぞきこむようにして彼の顔を見る。むすっとした表情のまま十弥は言う。

「偶然会ったのが、俺ではなくあいつだったことにムカついている。もっと早く君を探しに行くべきだった」
「今日は大事な打ち合わせよね。むしろこんなに早く帰ってきてくれたことに、私は驚いてるけど」

 まだ昼過ぎだ。打ち合わせのあとすぐに駆けつけてくれたのだろう。十弥はやっと少し表情をゆるめ、玲奈の髪を撫でた。

「仕事は大事だ。だが、君とお腹の子とは比べられない。そんな簡単なことがまだわからないのか」

 玲奈が答えないでいると、十弥はゆっくりと顔を近づけ玲奈に口づけた。甘く、優しいキスに玲奈は気持ちがほどけていくのを感じた。

「お腹の子は大丈夫だった。心音もしっかりしていて、順調だと」
「では、あの涙のわけは? 昨日も様子がおかしかった。俺は君の涙をぬぐう役をほかの男に譲る気はないぞ」

 まっすぐな十弥の眼差しがくすぐったい。彼にこんなふうに大切にされる価値が自分にあるとはとうてい思えないが、十弥の誠意にきちんと答えようと玲奈は覚悟を決めた。
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