聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「ごめんなさい。ちゃんと話すから」

 妊娠を報告したときの母親の反応、それによってまた自信を失ってしまったこと。玲奈は胸の内をすべて明かした。

「十弥と赤ちゃんがなによりも大切。でも、不安でたまらなくなるの。私のせいで、ふたりを不幸にしたらどうしようって……」

 十弥はかすかに震える玲奈の身体を自身の胸のなかに包みこむ。玲奈は彼のシャツの胸元をきゅっと握りしめ、続ける。

「母親と縁を切ればいいってわかってる。絶縁して、二度と思い出さなければ、私はきっと幸せになれる。でも……やっぱりたったひとりの母親で、つらい記憶も多いけどそれがすべてでもなくて」

 玲奈の話は支離滅裂で、自分でもなにが言いたいのかわからなくなっていった。

(お母さんなんて、嫌い、大嫌い。だけど、笑ってほしかった。玲奈って、名前を呼んでほしかった)

「うっ」

 こぼれた嗚咽は次第に大きくなり、玲奈は小さな子どもみたいに泣いた。背中をさする十弥の手があまりにも優しくて、そのせいでさらに涙があふれた。

 
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