聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「私にも無理ですよ。ロンドン時代の秘書の方に来てもらっては?」

 たしか十弥の秘書は現地調達だったはずだ。向こうでは秘書職はエキスパートらしいから、かなりの金額を積む必要はあるかもしれないが。
 玲奈の言葉に丹羽は大きく肩を落とした。

「それが失敗に終わったから、うちでなんとかしてくれって話になったんだよ」

 弱りきっている丹羽を気の毒には思うが、玲奈も自分の未来を犠牲にする気はない。話は終わりだとばかりに椅子から立ちあがると、毅然とした態度で言い放つ。

「とにかく私は明日からは営業部の人間です。残った秘書室のメンバーでなんとかしてください」

 すると、丹羽はじとっとした陰気な目で玲奈を見据えて冷たく告げる。

「残念ながら、営業部への異動は取り消しになったよ」
「えぇ?」
「君が副社長秘書になることは社内の決定事項だ。断ったら、どうなるかな」

 玲奈は鋭く丹羽を睨み返す。

「パワハラじゃないですか、それって」
「なんとでも言ってくれ」

 玲奈は声を荒らげた。

「とにかく、私は副社長秘書にはなりませんから!」

 秘書室を出ていこうと玲奈が扉に手をかけると、反対側から強く引かれ扉が開いた。
< 8 / 111 >

この作品をシェア

pagetop