聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
五章
翌日。仲よく一緒に出社したふたりは秘書室のメンバーに結婚と妊娠を報告した。みんな、腰を抜かすほどに驚いていたが、丹羽だけがほくほく顔で手もみしている。

「ほら、ほら! ふたりは相性がいいだろうなって僕は最初から見抜いてたんだよ~。間違いなく、僕がふたりのキューピッドだよね」

 恩着せがましい言いように玲奈はやや呆れたが、十弥は彼ににこりと笑ってみせた。

「その通りです。室長には感謝していますよ」

 十弥に褒められ、丹羽はすっかり有頂天になっている。秘書室から副社長室に戻りふたりきりになると、玲奈は釈然としない思いを十弥にぶつけた。

「すっかり丹羽室長のお手柄みたいになってたけど……」
「大手柄に違いないだろう。彼が引きとめてくれなかったら、玲奈は営業部に異動してたんだから」
「それはまぁ、そうだけど」

 とはいえ、あの逃げ足だけが取り柄の男がキューピッドを名乗るのは不快だった。ご機嫌ななめな玲奈をとりなすように、十弥は柔らかな声音でささやく。

「もっとも、君が営業部にいたとしても口説くつもりではあったけどね」

 甘い台詞に玲奈がうろたえていると、彼は玲奈のお腹に手をそっと手を当てた。

「だが、少しでもタイミングがずれていたらこの子はいなかったかもしれない。そう思うと、室長はやっぱり大手柄だ」

 十弥につられて玲奈もくすりと笑みをこぼした。

「そうだね。そういうことにしておこう」

 会社内だというのに、彼とふたりきりでいるとついつい頬がゆるんでしまう。玲奈は気を引き締めるようにぴしりと背筋を伸ばすと、十弥に背を向けパソコンに向かった。

「昨日お休みした分を取り戻すため、今日はしっかり働きます」
「助かるが……無理はするなよ。残業は禁止だ」

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