聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 その言葉通り、就業のベルが鳴り終わると、十弥は玲奈のパソコンを強制的にシャットダウンしてしまった。

「あぁ、もう少しやり残した仕事があるのに」
「ダメだ。今日は俺も一緒に帰れるから」

 彼に説得され、玲奈は渋々十弥の車に乗りこんだ。静かに車が走り出すと、彼が言った。

「さっき、役員にも結婚の報告をしてきた。それから、俺の両親にも電話で」
「……反対されなかった?」

 玲奈にとってそれは一番の難題に思えたのだが、十弥はあっさりと否定した。

「みな祝福してくれたよ。母親はちょっと、アレだったが……」

 十弥の複雑そうな顔を見て、玲奈はがくりと肩を落とした。

「やっぱり。お母様は反対なんですね」

 仕方のないことだが、はっきりわかるとやはり悲しい気持ちになる。会長である十弥の父親は知っているが、玲奈は彼の母親の人となりはまったく知らない。経済界の重鎮の娘で、とんでもないお嬢様だという話は聞いたことがあるが。

 十弥は苦笑して首を横に振る。

「いや、そうじゃない。心配なのはそういう意味ではなく……」

 玲奈は「では、どういう意味なのか?」と聞いたが、彼は笑うだけで答えなかった。だが、その意味は帰宅後すぐに判明することになった。
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