契約結婚は月に愛を囁く
 そしてもう一つのお気に入りは、愛犬達が元気に駆け回る姿だ。
 壊して困るような物は何もないから、思い切り遊べる場所。

 愛犬達は今ではすっかり年を取り、子供を産んだ雌の犬は我が子の動きを横たわって眺める親犬となった。 子供達はとにかく元気で、どれだけ走り回って親犬に窘められても、まだ走り足りないと言わんばかりにまた走り出す。

 そんな日常風景が逆に新鮮で、飽きないのだ。

「あの仔犬達はどこか引き取り手はあるのかしら?」

 私が侍女のハンナに尋ねると、彼女は答えた。

「あの仔犬達が産まれた時、旦那様はこのまま飼おうかと奥様と話しておられましたよ」

「あら、そうだったの?」

「えぇ、私は奥様付きの侍女でしたから」

「そうだったわね。 そんな貴方を私の侍女に下さって、お母様は本当に良かったのかしら」

「奥様はメリル様をいつでも愛していらっしゃいますから」
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