契約結婚は月に愛を囁く
 それは寄宿学校時代、占星術を学んだ時の事。
 ジョルジュが不意に話した始めたのだ。

『覚えてるよ。 確か教師はその道の研究者だったよな』

『俺さ、それについて妙な噂を聞いたんだ』

『妙な噂?』

『魔術の使い手だって話』

『魔術って、そいつが?』

『表立って教えるのは占星術なんだが、裏では魔術を使ってるとか』

『魔術というと、例えばどんな?』

『危害を加えたり命を奪ったり、そんな事はしないらしい。 ただ、人の心を操る術を持ってるそうだ』

『まさか俺達生徒にその魔術とやらを使ってたなんて言うんじゃないだろうな』

『そこはわからない。 証拠もないし、そんな記憶も違和感もないからな』

『俺だって』

『でもさ、覚えてないか? ほら、あのダビデの……』

『あの胸糞悪い件か』

『彼女はミアと言ったか。 今はダビデと結婚して幸せに暮らしてるんだろ?』

『メリルの話ではもうすぐ子が産まれるらしい』

『良かったよなぁ』

『あの侯爵の息子ヒューゴ、今は何をしてるんだ?』

『魔術協会の会員だ』

『それって……』
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