契約結婚は月に愛を囁く
 ジョルジュの話によると、こういう事らしい。

 ヒューゴは平民のミアに好意を抱いていた。
 あの時はつまらない言い訳をしていたが、実はそうではなかった。
 叶わぬ想いを遂げる為に、魔術で彼女を襲おうとしたのだ、と。

『何だ、それ……』

『しかも、だ。 その魔術は誰でも使えるわけじゃない、ヒューゴにも使えないんだ』

『魔術を使って襲おうとしたんじゃないのか?』

『魔術協会の中に男を魅了する死神のような女がいるらしくてな。 女は魔術師を使ってヒューゴにミアを襲わせようとしたんだろう』

『男の為……?』

『その魔術協会がどんな所で、協会のトップが誰なのかも表には出ていない。 もちろん、その女についても詳細不明だ』

『魔術協会……謎の集団というのは気味が悪いな』

『あぁ。 しかも、魔術師が寄宿学校の教師をするなんておかしいだろ?』

『誰かの手引きとか?』

『おそらくな』

『だとしたら、ある程度の権力を持った人間……』

『さぁな。 ただ言える事は、その女にとっての魔術師はただの道具。 自分の目的を遂げる為の』

『目的というのは?』

『それはよくわからないが、か弱き女が下僕のように誰かに傅かせる姿は密なんだろうな』

『魔術の使い手と、その女は主従関係の可能性もあるかもな』

『あの教師は男だっただろ』

『あぁ』

『その教師も女に魅了された一人なんだよ』

『……』

『そしてダビデだけはミア以外には魅了されなかった』

『まさか、あの寄宿学校にその女がいたというのか?』

『あぁ』
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