契約結婚は月に愛を囁く
 アイリスが熱い視線を送っていたカークスに既に婚約者がいたとしても、この先どう関係性が転ぶかわからない。
 一刻も早く、アイリスと婚約の儀を結ばなければ。

 そしてアイリスも言ったのだ。

『私を婚約者にして下さらないかしら、ジョルジュ様』

 カークスから視線を俺に移したアイリスの瞳にはもう熱は残っていなかったが。
 それでも構わないと思った。
 アイリスの愛は今はなくとも、婚約者でいればいつかその瞳が俺だけに向けられるはずだと信じて疑わなかったから。

 俺は本当に子供で、何も知らない男だった。
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