契約結婚は月に愛を囁く
実は俺とメリルは数ヶ月前まで共に寄宿学校の生徒で、ダビデとも勉学を共にした事がある。
メリルと彼の互いの関係は友人の域を出ていなかった。
そしてダビデは寄宿学校を出た後、ずっと恋い焦がれていた女と夫婦になった。 二人とも平民同士。
身分差など何の障害もなく、幸せに暮らしていると聞く。
メリルと俺は愛情など持たない関係でも、互いの気持ちはよく知っていた。
だからメリルの誘いを断れなかった。
ダビデを忘れる為に俺に抱いてくれと言ったのだから。 自分に逃げ道を作らない為に。
なのに、メリルは俺を見ながら泣いた。
『どうした?』
心が繋がらない関係でも、初めてなのだからせめて優しくしているつもりだったのに。
何故泣くのか、と見下ろして聞いても……。
『何でもありません』
『いいから言ってみろ。嫌ならやめるから』
『ただ、悲しいだけです……』
好きな男を想いながら、俺を前にして泣いたメリル。
その時だけは慰める言葉を何も持ち合わせてはいなかった。
メリルと彼の互いの関係は友人の域を出ていなかった。
そしてダビデは寄宿学校を出た後、ずっと恋い焦がれていた女と夫婦になった。 二人とも平民同士。
身分差など何の障害もなく、幸せに暮らしていると聞く。
メリルと俺は愛情など持たない関係でも、互いの気持ちはよく知っていた。
だからメリルの誘いを断れなかった。
ダビデを忘れる為に俺に抱いてくれと言ったのだから。 自分に逃げ道を作らない為に。
なのに、メリルは俺を見ながら泣いた。
『どうした?』
心が繋がらない関係でも、初めてなのだからせめて優しくしているつもりだったのに。
何故泣くのか、と見下ろして聞いても……。
『何でもありません』
『いいから言ってみろ。嫌ならやめるから』
『ただ、悲しいだけです……』
好きな男を想いながら、俺を前にして泣いたメリル。
その時だけは慰める言葉を何も持ち合わせてはいなかった。