契約結婚は月に愛を囁く
 昨日、ジョルジュの屋敷から戻った俺はメリルが居ない事について、ジョージを問い詰めた。
 ところが、ジョージは決してメリルの居所を喋ろうとはしない。

『ご自分でどうぞ』

 自分で探せだなんて、主に支える人間としての態度でもなければ言葉でもない。
 それは、そうしなければならないほどの事態が起きたという事だ。

 メリルは屋敷内のどこを探しても見つからない。 どこかに出掛けているわけでもないらしい。
 とにかくどこにも姿が見えなかったのだ。

『ジョージ。 メリルがどこにもいないのは何故なのか、教えてくれないか』

 すると、ジョージはため息を一つ吐いて言った。

『先日、ベネット子爵様がお見えになりました』

 ジョージはもうそれ以上何も喋ろうとはしなかった。

 そして俺はすぐに馬車で発ち、やって来たのだ。
 ベネット子爵家に、メリルの居るであろうはずの実家に。
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