契約結婚は月に愛を囁く
 俺の父上のウォーカー伯爵とメリルの父上のベネット子爵はその昔、同じ寄宿学校で学んだ友。

 当時は今のように男女で学べる機会はなく、男子のみ。
 ただ平民はもちろん、下級貴族に対する風当たりは冷たく、ベネット子爵も例外ではなかった。
 そんなベネット子爵の友となったのが俺の父上。
 地位で人間を見る学友とは線引きをしながら、決してベネット子爵を見捨てたりしなかった。
 勉学自体はどちらかというとベネット子爵の方が優秀で、父上は何度も助け船を出してもらったらしい。

 気の合う二人が寄宿学校を卒業した後も付き合いが続いたのはそれだけが理由ではない。 卒業後の大戦でも共に戦い、生き抜いた戦友でもあるのだ。

 そして二人がそれぞれの婚約者と婚姻の儀を行った時、誓ったのだと言う。

『もしも互いの子供が男と女だったら伴侶にしようではないか』

 そこで、その時が来たと思った二人が俺とメリルを引き合わせたのが運命のあの出会いだったのだ。

 そう、俺達は運命で結ばれていたのだ。

 なのに……。
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