契約結婚は月に愛を囁く
「君はこの国の王族をよくわかっていないようだ」

「どういう意味?」

「もしも仮に君が俺の子を宿していたとしよう。 だが、それでも君が王族の仲間入りをする事は決してないんだよ。 その子もね」

「え?」

「正式な妻以外の女が子を産んだ場合だがね」

「だったら大丈夫。 私達は正式に結婚するもの」

「万が一、君とそうなったら俺は王族としての全ての権利を放棄するつもりだ。 もちろん、貴族的立場もね」

 アイリスはようやく顔色が変わった。
 どうやら狙っていたのはやはり社会的地位らしい。

「俺はメリル以外の女と伴侶になる気は全くない」

「カークス! 貴方は私を愛してくれたじゃない」

「君を愛しているのはジョルジュだけだよ」

 アイリスが下唇を噛んで、俺を睨む。

 あれほど想っていたのに。
 心からアイリスを欲していたはずなのに。 あの想いが嘘のように引いていく。
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