契約結婚は月に愛を囁く
「最初はキャンベル男爵が後ろで糸を引いているのかとも考えた。 彼は男爵の地位を得た人間だからね、君を唆しているのかも、と」

 ベネット子爵邸を出た後、俺はキャンベル男爵邸に寄った。

 そこで驚く話を聞かされた。
 それは俺自身も想定していなかった内容だ。
 もちろん、彼女にも会いに行った。

「君は双子の妹だったそうだね」

「聞きたくないわ、そんな話」

 アイリスは耳を手で塞ぎながら身体中で拒否する。

「昔は双子の誕生は不吉な証として喜ばれてはいなかった。 だからキャンベル夫妻は産まれたばかりの双子のどちらかを手元から手放す事にした」

「やめて!」

「そして選ばれたのが君だった」

 それは残酷で悲しい話だ。
 それでもアイリスのした事は許されないのだ。
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