契約結婚は月に愛を囁く
 私が七歳の誕生日を迎えたある日の事だった。

『ミア、誕生日だから好きなお菓子でも買ってらっしゃい』

 母にお小遣いの硬貨を渡された私は、店の立ち並ぶ屋台通りへと走った。

『何を買おうかしら』

 嬉しくて色んな店を覗きながら、見た事もないような宝石色をした飴細工が目に入る。

『美味しそう』

 私はその飴細工を買って両親にも食べさせたら喜んでくれるかもしれないと思い、迷いなく買った。

『一つだけ舐めてみようかな』

 袋から取り出してポンッと口の中に放り投げると、甘くて蕩けそうな味が一杯に広がる。

『こんな美味しいの、初めて食べた』

 私は驚きと感動で、小躍りしそうだった。
 残りの飴細工は大切に持って帰って両親の口の中にも放り込んであげるのだ、この美味しさは私だけでは勿体無い。
 そう思った途端、家まで駆け出すには僅かな距離だが、飴が口の中で溶けて無くなる前に帰りたかったのだ。

 すると、曲がり角で誰かにぶつかった。
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