契約結婚は月に愛を囁く
 寄宿学校の、あの魔術師が私に告げた言葉を思い出す。

『どんなに願っても、運命は変えられないのだよ』

 私が地獄の世界を彷徨う運命は、キャンベル家から捨てられた時点で決まっていたのだろうか。
 だとしたらミアを平民に突き落としても、彼女がそこで幸せを手に掴むのは決められた運命だったのかもしれない。
 そしてカークスがメリル様を一生の伴侶にするのが変えられない運命なら、ジョルジュが私の為に彼との時間を許したのも変えられない運命。

 もしも、お腹に子が宿ったとしたら、その運命はどこへ向かうのだろうか。 その子を私はどのように愛するのだろうか。

 カークスの屋敷を後に、馬車で私が向かったのはある場所。

 どうしても、この目で見ておきたかった。
 ずっと避けていた過去と見ないようにしていた事実。
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